郷中教育 ▶
教えを繋ぐことの意味とは
先輩が後輩に教えを
幕末の薩摩藩には、藩校・造士館と共に各地域に郷中という制度がありました。
郷中とは方限(ほうぎり)という区割りを単位とする自治組織のこと。
言ってみれば、現在の町内自治会です。
幕末には薩摩藩内に三十数カ所の郷中がありました。
この郷中ごとに、青少年を小稚児(6~10歳)、長稚児(11~15歳)、二才 (15~25歳)、長老(25歳以上の妻帯者)の4つに分け、年長者が年少組を指導するシステムです。
特定の教師のいない教育というのが特色で、一日のほとんどを同じ年頃や少し年上の人たちと一緒に過ごしながら、身心を鍛え、躾・武芸を身につけ、勉学に勤しんだのです。
郷中教育には、人として守るべき3つの教えがあります。
それは、
①負けるな
②嘘をつくな
③弱い者をいじめるな
また、薩摩には「泣こかい、飛ぼかい、泣こよかひっ飛べ」という有名な言葉があります。
これは、困難に遭ったら、逡巡せず、結果を怖れず行動せよという意味で、薩摩士風を象徴する言葉です。
自分なりの答えを見出す「詮議(せんぎ)」
郷中の二才(にせ)たちの精神を練磨し、適正な思考や的確な判断力を養成する思考訓練の方法として「詮議」があります。
これは単なる知識の習得や判断力の養成ではなく、不確実な状況の中で柔軟に適正な実践的判断力を養成することを狙いとしています。
とっさの場合に的確な判断が敏速に行えることを修練する問答形式の方法です。
「主君の敵、親の仇がいる場合、どの敵から討ち果たすべきか?」
「殿様の急用で使いをして、早馬でも間に合わない場合はどうするか?」
「殿様と一緒に乗っていた船が難破した。向こうから一艘の助け舟が来たが、乗っていたのは自分の親の仇だった。どうするか?」
このような容易に正解を出すことのできない、二律背反の問いに対して、いかに適切な解決策を見出すか、徹底的に鍛えられました。
ビジネススクールのケーススタディに匹敵します。
つまり、定まった知識を教科書で学ぶのではなく、いろいろな状況を想定し、それに対処する方策や工夫を考え出し、実行する度胸を身につけるのです。
その結果、薩摩の武士には、何か物事が起きる前から想定外を考え抜き、事前に徹底して備える習慣が根付いていました。
今、学校教育では、学習者がチームで主体的・対話的に学びを深める能動的学習法として、アクティブラーニング(AL)が注目されていますが、郷中教育での詮議や輪読会は、まさにアクティブラーニングそのものといえます。
一般社団法人 繋ぐ未来の大人では
この「郷中教育」の手法をもちいて、未来の大人と共に歩んでいきます。